昨年度は意思決定のシミュレーションにより、適用に影響する要因の変異によって人間の効用関数が危険回避的か否かが変異し、また事象生起の確率評定が変異することを見出した。本年度は、昨年度の結果が、新たな条件の相違によってどの程度変化するかを検証した。まず昨年度より精緻な結果が出るようにシミュレーションの設定を変更したうえで、昨年度の結果がほぼ再現されることを確認した。本年度の結果を見るなら、効用関数は生き残り基準があるときに大域的に危険回避的に、基準がないときは大域的に危険選好的になるという結果がった。また、新たに導入した要因のうち、行為者の選択肢が減少すると危険回避的に変化することが見出された。また選択肢数の減少とともに確率評定関数の感応度(傾き)が減少する傾向が観測された。元来のプロスペクト理論が仮定する効用関数は、生き残り基準があり、選択肢数が少ない場合に該当する。
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