本研究は、都市の中の商店街に着目し、商店街の社会心理学的な機能を明らかにすることである。商店街は、単純に、近隣での買い物といった消費生活の一環(消費意識形成機能)であるだけでなく、個人と「場所」とを結びつける機能を果たす。地元という意識を持ちうるのは、商店街というものがあってこそである(地域意識形成機能)。また地元で形成される人間関係は幼児期より今に続くという意味で、また地縁にもとつくという意味で特別なものがある(人間関係形成機能)。さらに商店街でおこなわれるさまざまな催し物は土着性のある文化を生み出している(文化形成機能)。このような商店街の果たす社会心理学的機能を明らかにする。具体的には、商店街によって育てられてきた多様な世代の人々を対象とした社会調査・グループインタヴュー調査の実施と、「場所」としての商店街を対象とし、それらが私たち自身にどのように働きかけているのかをフィールド調査によって明らかにする。本年度は、活性化策の成功した金沢片町商店街を調査。金沢尾張町にある老舗のおかみ、80年の歴史をもつ時計店店主、洋品店金港堂主人へのインタヴューを実施した。また、片町商店街の活性化策について、振興会専務理事および事務局長より説明をうけ多数の資料を入手した。また商店街のインターネソト利用の実態を分析するための予備調査を実施した。さらに、我が国の商店街の形成と深い関連のある台北、ソウル、シンガポールにおける商店街の実態を調査し、我が国商店街との比較のための資料を収集した。さらに、来年度予定する「商店街の社会心理学的研究」本調査に向けて社会調査の項目の検討、およびフィールド実験の企画を検討した。
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