本研究は、都市の中の商店街に着目し、商店街の持つ社会心理学的な機能を明らかにすることにある。商店街は、単純に、近隣での買い物といった消費生活の一環(消費意識形成機能)であるだけでなく、個人と「場所」とを結びつける機能を果たす。「地元」という意識を持ちうるのは、商店街というものがあってこそである(地域意識形成機能)。また地元で形成される人間関係は幼児期より今に続くという意味で、また地縁にもとづくという意味で特別なものがある(人間関係形成機能)。さらに商店街でおこなわれるさまざまな催し物は土着性のある文化を生み出している(文化形成機能)。このような商店街の果たす社会心理学的機能を明らかにする。具体的には、商店街によって育てられてきた多様な世代の人々を対象とした社会調査・グループインタヴュー調査の実施と、「場所」としての商店街を対象とし、それらが私たち自身にどのように働きかけているのかをフィールド調査によって明らかにする。本年度は、首都圏30KM圏内の調査会社登録モニターより性別年代別にランダム抽出しインターネットにより調査した。回収調査票のうち1000票を集計した。また、昨年度に引き続き、我が国の商店街の形成と深い関連のあるホーチミン市、また東西文化の融合したチェニス市における商店街の実態を調査し、我が国商店街との比較のための資料を収集した。さらに国内では、歴史的伝統を持っ京都市内の商店街、および高松商店街での聞き取り調査および、多数の商店街実地調査を実施した。さらに、2002年度中小企業総合事業団によって実施された商店街のインターネット利用先進事例をもとに、2008年度時点での状況を調査し基礎資料を作成した。
|