これまでに収集した質問紙および半構造化面接によるデータに当該年度に収集したデータを新たに加え分析を行っている。分析の手順は、まず研究代表者が作成した「自己・他者試行的動機への態度質問紙」の下位尺度得点に基づいて、被験者をクラスター分析によって群分けを行い、群間で関連すると思われる他の尺度(親の期待の認知、親に対する欲求、対人関係に対する意識)と面接調査による報告内容の比較を行うもめであった。これらの分析によって、およそ6つのクラスターを抽出し、その特徴を明らかにすべく研究を進めている。 自己志向的動機と他者志向的動機の態度に関して、(1)自己志向的動機と他者志向的動機はかならずしも対立するものではなく、同時に両方の動機への傾向性により動機づけられている者が存在すること、(2)自己志向的動機と他者志向的動機の両方を保持している者でも、両者が葛藤したままの状態にある場合と無理のない形で統合されている場合が存在すること、(3)自己志向的動機、他者志向的動機のいずれかを優先している場合でも、他者からの期待に伴うプレッシャの認知や他者から評価されることの重要性の認知の異なる群が存在していることが示唆された。このような群間での自己・他者志向的動機への態度の違いは、中学・高校時代における親との関係のあり方、親の自分に対する期待の有無、学業に対する親の関与といった要因が影響していることが、面接調査の結果から示唆されている。
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