「自己・他者志向的動機への態度尺度」(20項目;短縮版)の改良を目指して、73項目の旧尺度を実施し、その分析と関連概念(就業動機や自己の二面性)との相関を検討している。また上記の研究協力者の中から面接調査への協力を募り、100名弱の協力を得た。今回は上記の尺度項目の一部についてその場で回答させその理由を尋ねるという手続きを加えた。 また過年度に収集した面接調査についてもテープ起こしを進め分析を続けている。 旧尺度項目の因子分析およびクラスター分析の結果はほぼ対応しており、「自己志向的動機の優先」、「他者志向的動機の自己志向的動機への還元」、「他者志向的動機と自己志向的動機の統合」、「他者志向的動機の重視」、「他者志向的動機の否定的側面の認知」、「他者からの評価の希求」の6つの態度が確認された。自己志向的動機の重視と他者志向的動機の重視は独立しており、他者からの期待に基づくプレッシャーの認知や他者からの評価の重要性が自己・他者志向的動機の関係づけのあり方に関連していることが再確認された。 面接調査において努力の理由を「自分のため」か「周りの人のため」かという観点から現在と将来について尋ねた内容を分析し、最も多かった「自分のため」の他に、「自分のための努力が周りの人のためになる」あるいは「周りの人のための努力が自分のためになる」、さらには「両方」といった自己・他者志向的動機の双方を関連づけて回答する者も多かった。また将来の努力のあり方を現在とは変えたいとする者も確認され、「努力」の意味づけや自己・他者志向的動機の関係づけが継時的に変化していく可能性が確認された。
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