前年度に実施した質問紙調査の分析を行い、「他看志向的動機」が、大学生の就業動機として人間関係への興味関心や人との交流を重視する「対人志向」や社会に貢献する仕事に就きたいとする「貢献志向」と関連していること、一般的な「自己」の二側面を測定する尺度において「他者からの被影響性」と「他者の欲求充足の重要性」と関連していることが示された。この結果により概念的妥当性がさらに高められた。 また面接調査についてもテープ起こしの内容分析を行い、個人のなかでの「自己志向的動機」と「他者志向的動機」の関係づけについて、いずれかを志向する態度だけでなく、双方共に重視する態度があること、そしてそのなかでも「自分の努力が他者のためにもなる」という方向と「他者のための努力が自分のためにもなる」という方向が存在し、関係づけの多様性が明らかにされた。 このような努力の理由づけは、両親との受験をめぐる葛藤経験、他者から期待された経験、その期待によってプレッシャーを感じた経験などによって影響を受けていることも明らかにされた。他者からの肯定的な期待経験は他者志向的動機の獲得を促進する一方、自分の欲求と他者の期待が対立するような葛藤経験は、現在の他者志向的動機を否定的に捉え、自己志向的動機への変更を促す可能性が示唆された。 平成21年度の面接調査では、他者志向的動機に影響を及ぼす親子関係のあり方を投影法の一種である「親子関係図式」によって測定し、また他者の欲求との葛藤処理の様式を測定する質問紙を同時に実施しており、現在分析中である。
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