研究概要 |
学生相談機関が学生に有効に活用されるか否かは,学生相談機関の広報活動の実質的な効果や,学生の特徴,学生相談担当者の学内での影響力,大学における学生相談機関の位置づけなど,外部からは直接にはわからない,その大学に固有の条件の影響を強く受ける。したがって,学生相談機関が学生に有効に活用されるための方法を明らかにするためには,現場を観察した上で,実践に根ざしたデータを収集し,さらに,それらを第三者的視点から分析して理論を構築することが必要である。本研究では,訪問調査という手法を用いて,実践活動領域におけるモデル化することを試みた。 平成21年度は,平成19~21年度に得られたデータを質的研究の視点から分析し,実践活動領域におけるモデル化することを試みた。これらの成果の一部を心理臨床学会第28回大会において発表した。学会発表時のフロアとの意見交換から,本研究のモデルをより洗練化し,学生相談活動について次のようなモデルを提案した。 このモデルでは,個々の大学の現在の学生相談活動のありようは「大学の要因」(大学上層部の意向,大学の特徴,学生の特徴)と「学生相談機関および相談員の要因」(相談員の職種・勤務体制,相談員の臨床オリエンテーション・キャリア,相談員の志向性・価値観・性格)から理解できる。 「大学の要因」と「学生相談機関および相談員」の要因の自由度が高い大学は自ずと学生相談活動が発展しやすい条件を持ち,自由度が低い大学は学生相談活動が発展しにくい条件を抱えている。学生相談室のより効果的な運営を考える際には,本研究で得られたモデルと学生相談室が持っている条件を踏まえて活動モデルを立案する必要があることが示唆された。
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