本研究は、「文検」修身科の歴史的性格、とりわけ15年戦争下のそれを、『教育修身研究』という雑誌(1931年創刊・1944年廃刊)の分析を通して明らかにすることを目的とする。 次の五つの課題の分析を行う。 (1)『教育修身研究』に関する基礎的データの整理。 (2)『教育修身研究』掲載の受験(合格)体験記による受験生に関する分析。 (3)「文検」修身科の試験問題の分析。 (4)「文検」修身科の試験委員の分析。 (5)師範学校、中学校、高等女学校における修身教科書の収集と分析。 以上の五つの課題の分析を通して、次の3点の事柄について考える。 (1)15年戦争下において、「文検」修身科の歴史的性格が、それ以前の時期と比べてどのように変化したのか。時局の大きな変化が、「文検」修身科の試験問題にどのように反映したのか。 (2)15年戦争下において、修身科の中等教員が求められた教養の内容は、それ以前の時期と比べてどのように変化したのか。 (3)「半ば学問、半ば教育」といわれる旧制中学校の性格が、修身教育においてどのように顕現したのか。教育勅語に集約された理念を修身教育として教授した小学校と、まがりなりにも修身科の背後にある倫理学や哲学の「研究」成果を教育した大学の間に置かれた中学校で教育された修身科の内容は、どのような性格を持っていたのか。
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