本年度は、以下の4つの項目について調査を大きく進捗させることができ、目下、本研究の成果をまとめた書籍刊行に向けて、構成の検討も含めた作業を進めている。 1.日本諸学振興委員会各学会委員に関するデータベースの完成。また各学会の研究発表者についてのデータベース作成を進め、ほぼ完成させることができた。 2.日本諸学振興委員会で開催された教育学会以外の各学会(哲学、国語国文学、歴史学、経済学、芸術学、法学、自然科学、地理学)についての調査。それぞれの学会の研究報告集を手がかりに各学会の内容分析を行い、それぞれの学問分野の学界状況の変化などにも着目しつつ、戦時下から戦後改革期にかけての人文科学・社会科学の学界状況の中に日本諸学振興委員会各学会をどのように位置づけるかの検討を進めた。 3.前年度の成果をもとにしつつ、日本諸学振興委員会教育学会の教育学者に対する組織化並びに協力関係について、何名かのキーパーソンとなる教育学者の活動なども具体的に明らかにし、国民精神文化研究所の講習会などを通しての中等学校教員の組織化と教育学会開催などの関係を検討した。 4.日本諸学振興委員会と各大学との関係について、東日本の大学の調査を進め、日本諸学振興委員会開催に関する新たな資料をいくつか発見することができた。また、日本諸学振興委員会開催と関連する形で実施された大学における講義内容調査、文部省教学局が行った「要注意」大学教員の調査に関する資料収集も進め、その内容検討も行うことができた。これらの調査を通して、日本諸学振興委員会の事業の実態解明を進めると同時に、日本諸学振興委員会も含めた、戦時下の大学における思想・学問統制、学術・教育の再編成の動きについての全体像についての考察を進めることができた。
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