研究概要 |
本研究課題に直接関係する研究成果については,円周率の数値表現を利用する擬似乱数生成法に関して,考察と比較数値実験結果をまとめ,2007年7月ベルリン工科大学におけるセミナーおよび2008年2月京都大学情報学研究科におけるセミナーで口頭発表を行い,それぞれの出席者による積極的討論を受けた.また,確率微分方程式における数値的安定性,特にMS安定性との関係についても考察を進め,研究分担者である齊藤と共著論文を著すとともに,討論を継続している.同時に,離散変数法の視野を広げ,その可能性を広げるため"先読み"線型多段階法(Look-ahead linear multistep methods)と称する新しいクラスを提唱し,その初歩的な考察を行って,収束性・安定性に関して口頭発表を行った.安定性は確実に向上させることができるが,その解析方法は従来よりかなり複雑になり,有効な手段を模索している.一方,遅延微分方程式の数値的安定性解析に関しては,上海師範大学の研究グループとの共同研究で,その特性方程式に対して有効な新しい解析方法を見出して,共著論文を刊行することができた.離散変数法の実装において大きな課題である,線型化部分,特に大規模化した線型部分の反復解法としてはKrylov部分空間法が有力であるが,その効率化,特に並列計算を意識した効率化について,共同研究者である中村真輔と考察を進め,非対称行列の場合にもpre-fetchと名づけたアルゴリズムについて,その構成と実現を行って,共著論文を刊行した.この間の研究は,離散変数法の解析を前進させることができたと信じている.
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