現在、集合値計画法の微分概念に関する研究は、理論、応用の両面から発展が強く望まれている。従来の集合値写像の微分概念はグラフを用いて定義されているため、像の動きを的確に表現したものではなく不自然さが残るものであったが、本研究おいて導入した集合値写像の微分概念は、像の動きを的確かつ自然に表現したものであり、有用であることが期待されていた。このような状況を鑑み、平成20年度においては主に次のことについて研究を行った。 ●定義された集合値写像に対する微分概念に対する複数の例を述べ、この概念が有用であることを確認した。 ●集合値写像に対する微分概念を定義する際に必要な凸集合の埋め込み空間に対して、さらに一般的な位相を導入した。そして従来の位相、およびハウスドルフ距離によって決められる位相との比較を行った。 ●不等式型の制約を持つ集合値最適化問題の考察を行った。最初に、不等式型の制約条件を、集合値計画法にとって適切となるように拡張した。次にこの問題に対して、制約想定の研究を行った。まず、スレーター型の条件を導入して、解の特徴付けに関する定理を述べた。さらに、ある凸関数型の条件を満たすどのような目的関数に対しても解の特徴付けが可能となるような最も弱い制約想定を導入し、同値性に関する定理を導くことで、集合値計画法の基礎となる理論の一部を築いた。 ●これらの研究について国内外で発表し、多くの研究者から広く意見を聞くことができた。
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