集合値計画法の微分概念に関する研究は、理論、応用の両面から発展が強く望まれている。従来の集合値写像の微分概念は、関数のグラフやエピグラフなどの幾何学的な考え方に基づいて定義されているが、像の動きを的確に表現したものではなく、実数値などの微分概念の拡張にもならず、不自然さが残るものであった。本研究おいて導入した集合値写像の微分概念は、像の動きを的確かつ自然に表現したものであり、集合値計画法で有用であることが確かめられている。このような状況を鑑み、平成21年度においては主に次のことについて研究を行った。 ● 集合族における線形結合、一次独立の概念を導入した。この考え方に基づいて、集合値最適化問題をこれまでよりも比較的利用しやすい形でモデル化し、このモデルにおける集合値写像の ● 微分概念を用いた解法を明らかにし、またこれまで困難だった双対空間を正しく記述することによって双対理論からのアプローチを示した。これらのことにより、本モデルが理論的にも優れていることが確認できた。 ● 上記モデルに基づき、不等式型の制約を持つ集合値最適化問題の考察、特にこのタイプの問題に対する制約想定の研究を行った。どのような凸関数型の条件を満たす目的関数に対しても解の特徴付けが可能となるような最も弱い制約想定を導入し、同値性に関する定理を導くことで、集合値計画法の基礎となる理論の一部を築いた。 これらの研究成果を発表し、多くの研究者から広く意見を聞くことができた。
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