研究概要 |
本研究の主目的は「凸核の境界」という双曲構造と「不連続領域」という等角構造との間の相互関係を追求することである。以下に具体的な課題とそれに関する実績を箇条書きする。 (1)(g,n)型の終端b-群の変形空間(マスキット・スライス)のプリーツ座標の構成。この課題は高次元の空間を扱うため、これまで一般論が展開できずにいたのだが、昨年度ウォーリック大学のSeries教授が(1,2)型のマスキット・スライスのプリーツ座標の構成に関する論文を発表した。その論文を理解するためSeries教授と研究連絡を行った。次年度は連携研究者の宮地秀樹(大阪大学)と共同でSeries教授の理論の一般化を探る。(2)(g,n)型の終端b-群におけるThurstonのK=2予想の反例の具体的構成。この課題については2007年にモンペリエ大学を訪問した際にSilhol教授と議論をした結果を2008年に論文で発表した。その際、双曲四角形のモジュラスの計算に近似計算を用いる箇所があり、その部分の理論化を考察した。(3)擬フックス空間の正則切断から定まるタイヒミュラー空間のプリーツ座標の構成。この課題についてはベアス・マスキットスライスのプリーツ座標の構成についてParkonen氏との共同研究を2007年に論文で発表した。その後マスキット・スライスへの退化との関係を連携研究者の山下靖(奈良女子大)と調べたので、次年度に論文で発表する予定である。(4)プリーツ多様体の構造とタイヒミュラー空間の可視化。この課題については、リーマン面の正則族の可視化に取り組んだ。具体的には位数2の自己同型を持つ種数2のリーマン面の、トーラス上の正則族の具体的な構成とその正則切断の決定ができたので、学会および論文で発表した。
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