研究概要 |
本年度は,本研究室で最近提案した矩形開口列フィルターを用いた位相回復法(レンズを全く使用しない新しいイメージングシステム)を,レンズによる結像システムが利用できないX線領域へ拡張すること,および,光の近接場散乱からの物体イメージングの可能性を探ることを目的としていた。その結果,超短波長のコヒーレントX線(波長1A程度)を用いても実際に作成可能な矩形開口列フィルターによってナノサイズの物体の振幅分布と位相分布を正確に再生できることを計算機シミュレーションにより確認できた。この成果は,物理学専門の論文誌としては最も権威のある米国物理学会速報誌Physical Review Lettersに掲載された。また,昨年秋の応用物理学会でも発表した。その後,さらに改良を行い,物体と矩形開口列フィルター間の距離,矩形開口列フィルターと観測面間の距離をファーフィールド条件からフレネル条件に緩和しても物体再生が可能となる方法を考案し,その有効性を確認できた。この成果も論文にする予定である。次に,光の近接場による物体イメージングへの適用について検討した。まず,物体と矩形開口列フィルター間の距離をフレネル条件からさらに近づけても適用できるように方法の改良を行った。その結果,波長程度の横方向分解能をもつ高開口数イメージングが可能となり,さらに奥行き方向の分解能も向上させることができた。この方法の分解能はホログラフィー顕微鏡とほぼ同じであるが,ホログラフィーとは異なり参照波を必要としないという利点をもつ。今後は,本科研費で購入したFDTD光学ソフトによって計算した近接場データから本方法のプログラムによって物体を再生させるシミュレーションを開発し,最終的には,波長以下の物体でも再生できる新しい近接場イメージングシステムを構築する予定である。
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