研究概要 |
本研究は高温超伝導GdBCOスパッタ薄膜中に、磁性材料である希土類酸化物RE203 (RE=Sm, Eu, Gd, Dy, Ho, Er and Yb)及び、希土類金属をドープする事により、人工ピン止めセンターを作り出し臨界電流密度の向上を目指すものである。磁性材料は磁気モーメントを持っているため、常伝導状態において、磁場中に試料を置くことで、ナノ磁性粒子の磁気モーメントを外部磁場Bの方向に揃えておく。その後、液体窒素の中に入れ、超伝導状態を作り出す。電流を流すと自己磁場が発生し、超伝導体内部に侵入する。或いは、外部磁場を印加し、下部臨界磁場を超えると、量子化磁束が超伝導体内に侵入する。電流を多く流していくと、量子化磁束が移動しようとするが、常伝導磁性ナノ粒子にピン止めされる。この時、ナノ粒子内の磁気モーメントMの方向と、量子化磁束Φの方向は一致する。更に、電流を流していくと、量子化磁束には強いローレンツ力が働き移動しようとする。常伝導ナノ粒子でもあるので、超伝導領域を壊すエネルギーが必要なため、ピン止めされる。更に、磁性ナノ粒子で磁気モーメントを持っているため、量子化磁束が移動しようとすると、平行であった量子化磁束Φと磁性ナノ粒子の磁気モーメントMとの間に、トルクが働き、Mを回転させるエネルギーも必要になる。つまり、磁性ピン止めセンターを用いることで、2種類のピン止め力が共存することになり、強力なピン止めセンターになる。実験の結果、Sm203希土類酸化物をドープした時、自己磁場臨界電流密度が3.1[MA/cm^2]と最も高くなり、磁性ナノ粒子のピン止めセンターは有効である事を確認した。また、磁気モーメントの大きさにより臨界電流密度Jcも変化することが確認されている。
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