研究概要 |
キナーゼCdk2について、コムギ胚芽無細胞タンパク質合系を用い、1種類のアミノ酸だけが^<13>C/^<15>N/Dで三重標識され、他のアミノ酸が^<15>N/Dで二重標識されたものを合計20種類作成した。この20種類の標識体について、HN(CA)、HN(CO)、H(N)CA,H(NCO)CA,H(N)CO,H(NCA)COなどの各種2次元NMRの測定を行った。この測定データをもとにHNシグナルの帰属を行い、観測可能であった194個のHNシグナルのうち176残基分(91%)のHNシグナルを帰属できた。次に、Cdk2に基質アナログであるAMPPNPや阻害剤であるRoscovitineを作用させて、HNシグナルの変化を調べた。HNシグナルの変化を解析した結果、X線結晶解析では、Apo体と複合体でほとんど立体構造変化が見られなかったにもかかわらず、NMR解析の結果では、Apo体と複合体でヒンジ領域周辺の立体構造が変化していることがわかった。これは従来の常識とは異なり、キナーゼは整体中においては基質や阻害剤の結合により立体構造変化を起こすことを示唆している。さらに、NMRのCPMG法を用い、Apo体とRoscovitine複合体とでの動的構造の違いを調べた。すると、Roscovitine複合体においてはC-terminal lobeにおいて運動性の変化が見られ、阻害剤の結合により結合部位のみならずキナーゼ全体の運動性が変化することが示唆された。
|