研究概要 |
1.[Dmt^1]endomorphin-2(EM-2)、[Dmt^1,Aze^2]EM-2の軽水中でのコンフォメーション析(Dmt,2',6'-dimethyl-L-tyrosine ; Aze, azetidin-2-carboxylic acid) : 1D^1H-NMRスペクトル、2Dスペクトル(COSY,OCOSY and ROESY)を軽水中(pH5.20-5.25)で測定した。得られた距離情報を基に、シュミレーテッド・アニーリング法を用いて、ペプチドの溶液中での立体構造を構築した。得られたコンフォーマについて再びエネルギーの最適化を行った。EM-2は軽水中でcis/transの存在比は1:2でtrans体が優位に存在した。この存在比はDMSO中でもほぼ同等であった。これに対して、[Dmt^1]EM-2、[Dmt^1,Aze^2]EM-2においてはcis/transの存在比は2:1で、cis体が優位に存在していた。さらにcis体、trans体とも直線構造と折れ曲がり構造が混在していたが、cis体では折れ曲がり構造が多く観察された。 2.[Dmt^1]EM-2、[Dmt^1,Aze^2]EM-2のラット脳ホモジネート(シナプトソーム画分)に対する安定性の検討:ラット脳ホモジネート溶液(20mM,pH7.4)とEM-2、[Aze^2]EM-2もしくは[Dmt^1,Aze^2]EM-2とを37℃でインキュベートし、それら化合物の安定性を、HPLCで経時的に検討した。EM-2は200分後にはほぼ70%に消失したのに対して、[Dmt^1]EM-2、[Dmt^1,Aze^2]EM-2は200分後には90%分解せず残っており、ラット脳ホモジネート溶液に対し安定なことが示された。 以上、AzeやDmtの導入は分子のコンフォメーションを変化させ、酵素に対する安定性を増加させることを明らかにした。このことが、結合活性や生物学的活性の向上に寄与していると考えられる。
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