これまで我々は、糖尿病網膜症・虚血性脳疾患などの難治性疾患の病態における「組織低酸素状態→血管内皮細胞の細胞膜からのclaudin-5(tight junction構成分子)消失→血管バリアー破綻→病態悪化」というカスケードの重要性を見出すとともに、低酸素刺激による細胞膜からのclaudin-5分子消失過程におけるubiquitin-proteasome系の関与を示唆する知見を得た。これらの知見に基づき、平成19年度も引き続き、低酸素刺激下の血管内皮細胞におけるclaudin-5発現変化機構を解析を進め、以下の成果が得られた。1.Ubiquitin-proteasome系の関与について:低酸素刺激下(1%、24時間)の脳血管内皮細胞株bEND.3における細胞膜からのclaudin-5消失が、細胞内claudin-5蛋白質量の減少を伴うことが示された。そして、その減少がMG-132(ubiquitin-proteasome系の阻害剤)により抑制されるとともに、低酸素刺激下のbEND.3にubiquitin化の結果と推察される高分子量claudin-5分子が検出され、酸素濃度に依存したubiquitin化によるclaudin-5分解系の存在が示唆された。2.HIF-1 pathwayの関与について:HIF-1 pathwayは、低酸素刺激に対するある種の細胞反応を制御することが報告されている。HIF-1 pathway活性化状態とclaudin-5発現変化の関係をリアルタイムでモニターすることを視野に入れ、fluorescence resonance energy transfer(FRET)手法を用い、HIF-1 pathway活性化状態を可視化する系の確立を試みた。これまでに、低酸素刺激に反応するプローブは見出されたが、それらがHIF-1 pathway活性化状態を反映するプローブとして有用性であるか否かについて現在検討中である。
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