糖尿病網膜症・虚血性脳疾患などの難治性疾患の病態における組織低酸素状態の関与について、特に「組織低酸素状態→血管内皮細胞におけるclaudin-5(tight junction構成分子)の発現変化→血管バリアー破綻→病態悪化」というカスケードに焦点を当てた解析を進めている。脳血管内皮細胞株bEND.3を用い、平成20年度は以下の成果が得られた。低酸素刺激によるclaudin-5発現変化がubiquitin-proteasome系阻害剤MG-132により抑制されることから、酸素濃度に依存しclaudin-5を分解するubiquitin-proteasome系の存在が示唆された。そこで、claudin-5分子のubiquitin化状態を解析すべく、GFPタグを付加したマウスclaudin-5の発現コンストラクト[CL5-GFP]およびFLAGタグを付加したubiquitinの発現コンストラクト[FLAG-Ub(wt)]を作製した。[CL5-GFP]および[FLAG-Ub(wt)]をbEND.3細胞に導入し(transient transfection)、正常酸素濃度下あるいは低酸素濃度下に培養し細胞抽出液を得た。抽出液を抗GFP抗体にて免疫沈降・抗FLAG抗体にてプロットしたところ、ubiquitin化claudin-5の存在が証明された。そして、claudin-5分子のubiquitin化は、正常酸素濃度下のbEND.3細胞にても認められたが、その程度は低酸素濃度下のbEND.3細胞において軽度ではあるが亢進していることが示された。さらに、酸素濃度に依存したclaudin-5発現様式をリアルタイムでモニターするため、「CL5-GFP」発現するstable transfectant株を樹立した。
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