家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は成人発症の常染色体優性遺伝を呈する神経難病である。血中の異型トランスサイレチン(TTR)のほとんどが肝臓から産生されることから、近年、肝移植が行われるようになり、肝臓の異型TTR遺伝子を移植により正常化すると、全身症状が進行しなくなることが判明した。これまで我々は、single standard oligonucleotides (SSOs)を用いて、トランスジェニックマウスの肝臓の異型TTR遺伝子の正常化(約10%)に成功した。Chen Yらは、single-stranded DNA expression vectorを開発し、single-stranded DNAであるDNAエンザイムの細胞内発現で70〜80%の標的遺伝子の発現抑制が得られたことを報告した。そこで、本研究ではEAPの遺伝子治療の実用化に向けて、更に変換効率を上げるため、SSOsを細胞内で発現させるsingle-stranded DNA expression vectorを作成することを目的とした。まず、Chen Yらにより提唱された発現ベクターがsingle-stranded DNAを産生するかどうかを検討した。TTR遺伝子を抑制するDNAエンザイムを発現するsingle-stranded DNA expression vectorをTTR遺伝子を発現するHepG2細胞にトランスフェクションしたところ、TTR遺伝子の発現抑制が起こることをリアルタイムRT-PCR (70〜75%の抑制)およびwestern blot法にて確認した。次に、TTR遺伝子変換を起こすように設計したsingle-stranded DNA expression vectorを作成した。現在、最適なトランスフェクション法を検討しているところである。
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