研究概要 |
【はじめに】CPT-11はUGTIA1遺伝子型で毒性に個人差が生じる。われわれは切除不能大腸癌に対するFOLFIRI療法を、遺伝子多型に基づく前向き多施設共同第II相試験の結果を解析し、治療効果と毒性を遺伝子多型から予測するシステムを構築した。【方法】倫理委員会承認のICが得られ、多型解析を行った切除不能大腸癌71例を対象とした。遺伝子多型はUGT1A1*28, UGT1A1*6, UGT1A1*60, UGT1A7(N129K;T>G), UGTIA7(-57T>G), UGT1A9*22を解析し、臨床効果と毒性との関連を検討した。【結果】71例中Grade(G)3/4の血球減少を34例に認め、23例で腫瘍縮小(CR+PR)を得た。それぞれの多型単独では坑腫瘍効果を予測できず、毒性ではUGT1A1*6, UGT1A7 N129K(G), UGT1A7-57(G), UGTIA9*22アレルを持つ症例では有意(P<0.05)にG3/4の毒性を多く認めたが、予測的中率は最高63%であった。次に、われわれが新しく開発したGenotype subset selection(遺伝子型選択)法を用いた。毒性予測では、UGT1A1*28(TA6/6) & UGT1A9*22(T9/9)またはUGT1A1*28(TA6/7) & UGT1A7(-57;T/G)を持つ16例のうち12例(75%)にG3/4の毒性を認め、一方、UGT1A1*28(TA6/6) & UGT1A9*22(T10/10)、UGT1A1*28(TA6/7) & UGT1A7(-57;T/T)またはUGT1A1*6(G/G) & UGT1A1*60(T/T)を持つ29例のうち22例(76%)はGO-2と毒性は軽微であった。坑腫瘍効果予測では、UGT1A1*6(G/A) & UGT1A9*22(T9/9)、UGT1A9*22(T10/10) & UGT1A1*60(T/G)、UGT1A1*28(TA6/6) & UGT1A1*60(T/G) & UGT1A7(-57;T/G)またはUGT1A1*28(TA6/6) & UGT1A7(-57;G/G)を持つ12例のうち8例(67%)が奏功し、一方、UGT1A1*60(G/G)、UGT1A1*6(G/G) & UGT1A7(-57;T/G)、UGT1A1*28(TA6/7) & UGT1A1*6(G/G)またはUGT1A1*28(TA6/7) & UGT1A9*22(T9/10)を持つ15例のうち13例(87%)で効果がなかった。【結語】新たに開発した遺伝子型選択のアルゴリズムで、より精緻な毒性と効果予測が可能となった。
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