【はじめに】血管作動性物質であるPGE1は末梢血管を拡張し阻血部の血流を改善すると報告されているが、速やかに肺で失活されるため持続投与が必要となる。一方、lipo-PGE1は、レシチンでおおわれた直径約0.2μmの脂肪微粒子中にPGE1を封入したリポ製剤であり、肺での失活を軽減し担体となった脂肪粒子が障害血管壁に集積する作用のため1日1回の静注で作用としては十分であるといわれている。PGE1やlipo-PGE1の投与により胃管阻血部での組織血流量の増加が認められ、lipo-PGE1でその作用は投与終了10分後でも持続する事を既に報告した。今回、lipo-PGE1の一回投与の効果の持続時間とPGE1血中濃度について動物実験で行ったので報告する。【対象と方法】ブタ15匹を全身麻酔下に開腹し大弯側胃管を作製し短胃動静脈と大腿動脈に採血ルートを確保した。血流は、組織血流計(ALF21:アドバンス社、東京)を用いて胃管先端から4cmの部位の組織血液量を阻血部として測定した。生食・PGE1・lipo-PGE1を、それぞれ0.05μg/kg/minで10分間投与し、投与前、投与終了直後、投与終了10、20、30、60、120分後に血流量を測定した。【結果】生食投与群では、阻血部の血流に変化は認められなかった。PGE1・lipo-PGE1などの薬剤投与群では、前血流量は、7.8±0.5ml・8.1±1.Omlであった。薬剤投与終了直後の血流は13.3±1.3ml・13.6±1.3mlと有意に増加した(p<0.Ol)。PGE1投与群の血流量は、投与終了10分で8.1±1.0mlと有意に減少したがlipo-PGE1群では投与終了10分後でも13.0±1.3mlと増加したままであった。lipo-PGE1群の血流量は以後徐々に低下したが、120分後でも10.2±1.0mlと投与前と比較し有意に増加していた(p<0.05)。【まとめ】血管作動性物質でlipo-PGE1の投与により阻血部での組織血流量の有意な増加が認められ投与終了120分間持続していた。lipo-PGE1の間欠的投与により胃管阻血部の血流を改善させ、縫合不全を減少させ得る可能性が示唆された。
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