1、成体におけるTNFα活性化に対するTACEの機能解析:炎症応答・免疫反応に中心的な役割を担うTNFαはまず膜型蛋白として合成され、切断されたのち可溶型(活性型)になる.in vitroの解析ではTACE(TNFα converting enzyme)が有力な候補として考えられているが、TACE欠損マウスが致死性であるため成体におけるTACEのTNFα活性化の役割は解析が不能であった.そこで本研究ではTACEコンディショナルノックアウトマウスをもとに、TNFαの供給源として重要である単球系細胞にTACEが発現しない変異マウスを作製した.この変異マウスはLPSによる敗血症性ショソクモデルにおいて血中TNFαが野生型と比較して優位に低値であり、ショックに対し高い抵抗性を有することが示された.これらの所見から、TACEが成体においてもTNFα活性化に中心的な役割を有し、また単球系細胞に発現するTACEを抑制することにより敗血症性ショックに対し高い抵抗性を得ることが証明された. 2、膜型CSF-1の切断酵素の同定:CSF-1はマクロファージ・破骨細胞の分化・機能制御に必須の分子である.CSF-1は可溶型・膜型の両方の蛋白として合成されるが、興味深いことに膜型として合成されたCSF-1は細胞膜上でさらに蛋白分解をうけその一部が可溶型として機能することが示唆されている.この蛋白分解酵素は80年代にその存在が予測されていたがこれまで不明であった.本研究ではTACE欠損細胞を利用し細胞生物学的な手段を用いて、膜型CSF-1がTACEによって切断を受け可溶型となること、および切断を受けなかったCSF-1がエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ細胞上の発現量を調節していることを明らかにした.これらの知見は免疫・炎症で重要な機能を担うCSF-1の一層の理解に繋がるものと期待される.
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