白色家兔の中耳粘膜および鼻粘膜から温度応答性感受性皿を用いた粘膜細胞シートを作成し、組織学的検討および移植実験を行った。その結果、組織学的検討では中耳粘膜細胞シートおよび鼻粘膜細胞シートは正常中耳粘膜とほぼ同等の構造を呈した。また中耳粘膜細胞および鼻粘膜細胞シートをそれぞれ移植したところ、移植した粘膜細胞シートは生着し、含気ある中耳腔が作成された。さらにCT撮影により、中耳骨包の含気化の状態を観察することができた。 一方、ヒトへの臨床応用を考える場合、鼻粘膜や口腔粘膜は外来での採取が容易であり、患者の負担も少なく、シートの作成も容易かつ短期間でできる。そこでこのような代用組織から作られた粘膜を中耳に移植することに問題がないかどうかをさらに確かめるために、鼻粘膜や口腔粘膜から作成した粘膜シートが、上皮下の粘膜細胞由来の線維芽細胞の作用により中耳粘膜として機能を持ちうるかについての基礎的検討を行った、その結果、中耳粘膜由来の上皮細胞に特異的に発現する遺伝子および中耳粘膜百合の線維芽細胞と共培養することにより発現の変化を引き起こす遺伝子がいくつか認められた。 またヒトの鼻粘膜および中耳粘膜から粘膜シートを作成し、組織学的に中耳粘膜と差がないことを確認した。さらに安全かつ効率を上げたシートの作成法を検討しており、実際の臨床応用に向けてのシュミレーションを開始した。今後はGMP施設での操作などの訓練を行い、なるべく早い時期でのヒトに対する臨床研究を目指している。
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