カエル味覚器である茸状乳頭は切り取って除表した後、再生してくる。本研究の目的は再生過程にあるカエル味覚器内細胞の電気生理学的特性を細胞タイプ別に調べ、成熟味細胞と比較することで、味細胞の分化・再生機構を明らかにすることである。本年度は、成熟味細胞の基礎的データを得るために、味細胞タイプ別にNaCl味覚刺激に対する応答を調べた。さちに、除去後1ヶ月経過し再生してきた茸状乳頭を用いて再生過程における味細胞の電気生理学的特性をパッチクランプ記録にて調べた。カエル舌咽神経のNaCl味覚応答を増強する2mM NiCl_2を加えた等張NaCl溶液を刺激液に用いて味細胞のNaClに対する応答をパッチ電極法とCa^<2+>イメージングにより調べた。NaCl刺激はタイプIII細胞にのみ内向き電流と細胞内Ca^<2+>膿度の上昇を引き起こしたが、タイプIbおよびタイプII細胞は応答を引き起こさなかった。細胞外灌流液のCa^<2+>を抜いても、刺激による細胞内Ca^<2+>は上昇したため、Ca^<2+>は細胞内Ca^<2+>ストア、からもたらされたものと思われる。次に、内向き電流の成因をcaged Ca^<2+>を用いて調べた。caged Ca^<2+>を充填したパッチ電極内液を用いてタイプIII細胞からパッチクランプ記録を行った。405nmレーザーでuncagingを行い、細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させた。細胞内Ca^<2+>濃度の上昇に伴って内向き電流が観察された。NaCl受容機構には細胞内Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>放出と細胞内Ca^<2+>濃度の上昇に伴う非選択的陽イオンチャネルの開口が関与していることが示唆された。再生過程にあるダイブIbおよびタイプIII細胞から膜電流を記録した。両タイプとも外向きおよび内向き電流が成熟味細胞と比べ小さくなっていた。再生過程において膜電流の大きさが変化することが明らかになった。
|