本研究の目的は入眠を促し、質の高い睡眠を提供するためにどのようなケアが効果的か科学的に検証することである。本年度は、睡眠・覚醒レベルをBIS(bispectral index)値を指標に、睡眠を評価する計画であった。しかし、種々の文献からBIS値はあくまで麻酔深度を評価するための測定機器であることから、睡眠の質を客観的に評価するには困難を要すると考えられた。そのため、客観的評価の1つとしてアクチグラフを使用することとし、測定条件の検討を行った。 また、足浴は睡眠を促すケアの1つと考えられているが、近年では遠赤外線ヒーターとスチームで足先から全身を温める機器(フットスパ)が販売・使用されている。そこで本研究ではこのフットスパの身体に及ぼす効果を自律神経機能を指標に検討した。7名の健康な女性を対象に、心拍変動の周波数解析、スキンコンダクタンス、唾液アミラーゼ活性をフットスパ実施(10分間)前後で測定した。その結果、心拍数には大きな変化はみられず、スキンコンダクタンスならびにLF/HFは実施直後に上昇する傾向がみられた。しかし、10分間の終了後にはいずれも開始前よりも低い値となった。このことは実施中は熱刺激により交感神経系が活性化されるが、終了とともに交感神経系が低下しリラクゼーション効果が生じたと考えられた。また、ストレスの指標とされている唾液アミラーゼ活性も徐々に低下し、終了後は実施前の1/2以下になっていた。今後は、ケアの1つとしてこのフットスパを使用し睡眠への効果を検討することとした。
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