研究概要 |
本尺度の開発においては、ここ数年来、認知症高齢者の残存能力を測定する尺度開発についての研究を重ねてきた。これまでの結果を先行研究結果と比較し、他既存尺度と併用して本尺度の信頼性および妥当性について検証してきた。その結果、他類似尺度(MMSEやFAB)と比較して軽度から中度の認知症高齢者を対象とした場合、本尺度の感受性が高いことが確認出来た。本年度は、地域における総合病院の入院患者(N=149;平均年齢75.8±15.1才;範囲29-97才)を対象に本尺度の簡易版を用いて彼らの残存能力を測定した。まず、長谷川式HDS-Rの結果との相関は中度Kendal10.45; Spearman0.58)を得た。病棟別平均値は合計14の内、内科(n=8,平均年齢77.5才)平均値(M=8.88、SD=4.45)、内科呼吸器(n=18,平均年齢77.7才)についてはM=8.29(SD=4.18)、循環器(n=9,平均年齢78.0才の平均値はM=6.78(SD=3.93)、内科リハビリ(n=46)の平均値はM=5.69(SD=5.29)であった。よって、70代後半の患者に認知能力の低下が見られ、この集団への援助が最も必要であることが判明した。次に、精神科病棟の入院患者を対象に測定した。患者75人の平均年齢は44.9才±8.2歳(10-80才)で男性49.3%(n=37)と女性51.7%(n=38)であった。総点14点の内平均値は12.29(SD=2.22)でこの平均値を境に比較した結果、11点以下は79%(59人)、12点以上は21%(16人)であった。診断別では統合失調症を持つ対象者の認知機能が最も低く、うつ病、薬物依存症を持つ対象者と続いた。診断別の順位は、調査実施前のプレテストにおいての結果と一致した。 これらの結果より、本尺度は認知症を持つ高齢者だけに限らず、知覚認知障害を持つ広い年齢層の対象について適切であることが分かった。
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