これまで軽度~中度の認知症高齢者を対象に彼らの認知能力についてアセスメントツールの開発に取り組んできた。本年度は、重度の認知障害を持つ高齢者を対象に彼らへの支援の在り方に視点をあてた。具体的には、認知症を持つ高齢者の在宅施設および在宅ホスピスを訪問したことにより次のようなことが分かった。つまり、重度の認知症状を持つ高齢者の認知能力のアセスメントを行うについては、従来のアセスメントツールは限界がある。今回、現場における対象とスタッフとの関わりについて参加・観祭した結果判明したことは、重度の認知障害を持ち合わせていても、関わりの仕方で対象から意義ある反応や意志表示が返ってくるということであった。すなわち、重度な認知障害を持つ対象への関わりは、従来の言語を用いた一元法だけでなく複数の知覚機能を併用した方法が、コミュニケーション技法として適切であることが分かった。その結果、対象が示した行動とその意義をケアに織り込むことで支援の継続が展開されたことを観察出来た。このような関わりは専門看護師(CliniCal Nurse Specialist)レベルである。高度の専門看護の実践の在り方についての詳細は次ページに掲示した論文に示した。 上記の参加観察から次のようなことが結論づけられる。認知症を持つ高齢者の認知能力のアセスメントツールや測定尺度の開発においては、軽度と重度に分けたツールの開発が必要である。さらに、認知能力が重度な対象については、ケア提供者と受容者間における相互作用に視点を当てることによって、どのような関わり[刺激]が対象にとって敵切か、または不適切かについて選別出来る。その結果、より個別性のある関わり[支援]が提供出来ると考える。今後、重度の認知障害を持つ対象についての関わりの仕方についてアセスメントツールを開発することで、緩和ケア・終末期ケア領域にも貢献出来るのではと考える。
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