研究概要 |
原爆文学再評価にあたって、散逸の危機にさらされている原爆文学関連資料の調査・保全が何よりも重要である。そのためには、調査・保全の拠点となるべき文学館が不可欠であるが、遺憾にも広島市には文学館が存在しない。広島市に設立されるべき文学館の具体像をさぐるために、各地の文学館を訪問調査した(日本近代文学館および同成田分館、北九州市立文学館、福岡市立文学館、ふくやま文学館、石川近代文学館、金沢文芸館など)。また、峠三吉「原爆詩集」の最終原稿が新たに発見されたので、これを電子化し、HP「広島文学館」で公開するとともに、広島市平和記念資料館(原爆資料館)および広島大学図書館の協力のもと、最終原稿および関連資料を公開展示した。なお、各地の文学館訪問調査および文学展示については「広島に文学館を!市民の会」の協力を得た。 重要な貢献にもかかわらず、邦訳がなされていないため、我が国における原爆文学研究の進展を阻んでいるJohn W. Treat, Writing Ground Zero: Japanese Literature and the Atomic Bomb, The University of Chicago Press, 1995(「グラウンド・ゼロを書く-日本文学と原爆」)の邦訳を「原爆文学研究会」会員の協力を得てすすめるとともに、法政大学出版局と交渉し、同社より出版することが確定した。出版予定は2009年6月である。
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