研究概要 |
原爆文学再評価にあたって、散逸の危機にさらされている原爆文学関連資料の調査・保全が何よりも重要である。そのためには、調査・保全の拠点となるべき文学館が不可欠であるが、遺憾にも広島市には文学館が存在しない。広に立されるべき文学館の具体像をさぐるために、 前年度に引き続き、日本各地の文学館を訪問調査した。 1日本近代文学館、神奈川近代文学館、大佛次郎記念館(2008年7月) 2姫路文学館(2008年10月) 3大阪府立国際児童文学館、田辺聖子文学館、堀辰雄文学記念館(2008年11月) また、2008年6月に長崎で開催された原爆文学研究会に参加するとともに、長崎大学医学部原 爆遺構を訪問調査した。 これらの訪問調査の結果についてはHP「広島文学館」において報告している。 原爆詩「生ましめんかな」で世界的にな広島の詩人氏所蔵の文学材資料がご遺族の希望で広島女学院大学に寄贈され、2008年10月、同大学図書館に「栗原貞子記念文学資料室」が開設されたが、本研究課題に深く関連することもあり、研究代裏者として、この事業がスムースに遂行されるよう側面から助言・支援活動を行った。「栗原貞子記念文学資料室」の開設は広島市に文学館が設立される具体的な展望がない現状では、原爆文学資料の保全にとって画期的な出来事である。 本研究課題にとってきわめて重要な意義を有するJohn W. Treat, Writing Ground Zero: Japanese Literature and the Atomic Bomb, The University of Chicago Press, 1995(『グラウンド・ゼロを書く-日本文学と原爆』)の邦訳作業を鋭意進め、研究期間最終年度に法政大学出版局より刊行するめどがたった。出版予定は2009年10月である。
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