従来、デンプン工業、セルロース工業などの多糖基幹産業においては、多糖誘導体はすべて古典的な化学反応により過酷な条件下で行われてきた。本研究は、酵素触媒を用いることにより、水中で、温和な条件で、多糖の修飾反応を効率よく行うことを目的とする。 硫酸化およびリン酸化糖の酵素合成による調製法の確立 単糖およびオリゴ糖の有機化学的硫酸化反応、リン酸化反応、エステル化反応、配糖化反応が多く知られているが、それらはヒドロキシ基の保護脱保護反応を必要とし、また、厳しい条件で反応を行わなければならず、グリコシド結合の開裂等、副反応が多いことから、温和な反応である酵素反応への移行が望まれる。そこで、まず有機化学的手法による標準サンプルの合成を行い、有機化学的手法による調製法の評価を行った。 硫酸化およびリン酸化多糖の酵素合成による調製法の確立 前項で述べたとおり、修飾反応の多くはグリコシド結合の開裂を伴い、多糖の低分子化および分子量の分散化が起こることから、材料としての機能が低下し、価値が下がる問題があった。前項の単糖およびオリゴ糖の反応条件を加味しながら、多糖であるデンプンのリン酸化反応を開発した。 修飾多糖・オリゴ糖の特性解析 修飾したオリゴ糖ならびに多糖を材料として活用するに際し、その物理化学的性質に関する基礎的データは大変重要である。そこで、今後上記の反応により得られた修飾多糖・オリゴ糖の引っ張り強度などの測定を行う予定である。
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