本研究の目的は、学士課程卒業者の高齢者看護の実践能力を明らかにした上で、新任期においてその能力を高める教育支援方法を検討することである。平成19年度は学士課程卒業者がジェネラリストとして修得した看護実践能力を基盤に自ら研鑽し、高齢者看護の実践能力を高めるための教育支援方法を明らかにするために、まずは内外の文献を検討し、高齢者看護の実践能力の項目作成(大項目12、中項目31、小項目122)を試みた。平成20年度は、平成19年度に作成した高齢者看護の実践能力を構成する項目のうち中項目について、卒業直後に高齢者ケア施設に就業した新任期の看護師6名の高齢者看護の実践能力の修得状況を調査した。また、高齢者ケア施設の教育責任者3名の教育支援の状況に付いても調査し、これらを合わせて高齢者看護の実践能力を高めるための教育支援方法の試案を作成した。次に、作成した教育支援方法の試案を高齢者ケア施設の教育責任者2名との意見交換や新任期の看護師1名の実践の状況を基に検討・修正し、教育責任者の確認を経て、教育支援方法を作成した。作成した教育支援方法は、《教育支援の方針》《教育支援の方法》《教育支援方法の使い方》、各大項目ごとに示した〈中項目〉〈各年次別の到達レベル〉〈教育支援の内容・方法〉〈1年の看護師の課題〉で構成された。高齢者看護の実践能力の項目は、教育支援方法に効果的に用いる観点から再検討し、大項目は「認知症の高齢者の看護」と「家族への援助」を加えて10に、中項目32、小項目121に修正した。平成21年度は、これらの教育支援方法をさらに精選させ、施設の状況をふまえた新任期の教育支援プログラムの開発を行なう予定である。
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