本研究の目的は、次世代のナノスケールULSIデバイスの実現に資する、無結晶方位、無結晶粒界合金による配線材料、電極材料を開発することである。具体的には、アモルファス状態と微結晶粒との混合からなるミクタミクト合金材料の電気的および結晶学的物性を解明し、結晶粒界を解したCu拡散不良を起こさない無結晶粒界バリアメタル層や、結晶面に依存する仕事関数ゆらぎの無い金属ゲート電極の実現を目標としている。 本年度では研究計画に則り、遷移金属(TM)-Si-Nにおける結晶化温度や抵抗率、仕事関数の組成依存性などを評価した。主として、Sio_2/Si基板上に窒素組成の異なるTi-Si-N合金材料を作製し、熱処理に伴う微結晶粒形成と抵抗率の変化について詳細に調べた。膜中窒素濃度が30-40%程度の低窒素濃度Ti-Si-N膜では、熱処理に伴って膜中の微結晶粒の粒径が数nmから数十nmまで大きく増大し、同時に抵抗率が一桁程度も減少する。一方、膜中窒素濃度が50%程度の高窒素濃度膜では、900℃までの熱処理に対してはX線回折スペクトル上に結晶粒の析出を示すピークは観測されず、抵抗もほとんど変化しない。一方、結晶粒形成との関連を明かとするには至っていないが、Hf-Si-N膜の場合では低抵抗率膜が形成される窒素組成が極めて狭い傾向が見いだされており、金属種によって結晶構造形成と抵抗率との相関が大きく異なる可能性を示唆するものと考えられる。更に、Hf系高誘電率ゲート酸化膜上におけるTM-Si-N膜の物性評価も開始した。
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