研究概要 |
本研究は, 英語でのスピーキングにおけるWillingness to Communicate(積極的に英語で話そうとする態度)を育成することを目的とした指導の効果を検証した。特に, 不安などのスピーキングに対する抵抗感を軽減することをねらいとし, 実際の授業でSPMと呼ばれる指導法を実践し, その前後で抵抗感に変化があるのかどうか分析した。 対象となる授業は, 大学1年生を対象としたスピーキングの授業で, 必修の授業であった。さまざまな専攻の学生が履修するが, 英語を専門とする学生はいなかった。この授業でSPMという, 制限時間内に発する文の数を伸ばす活動を取り入れた指導を行い, 指導の前後で抵抗感の変化を, 平均値の水準での分析(t検定)と学習者個人の水準で分析(クラスター分析)を行った。抵抗感の測定は, 否定的な能力認知, 不安, 話すことの回避の3つの因子からなる質問紙を用いた。 その結果, 3つの因子すべてにおいて, 平均値の水準で統計的な有意差が見られ, 全体的な傾向として抵抗感が軽減されたことが示された。また学習者個人の水準の分析では, 3つの因子のパターンにより学習者を群分けし, 当初どのような抵抗感を持っていた学習者が, 指導後にどのような変化をしたか分析を行った。その結果, 当初抵抗感が強いと判断された学習者が多数いたが, その群でも抵抗感の軽減が起こっていたことが示された。また, その他の群でも, 当初の抵抗感が強くなくても, 軽減が起こっていたことが示された。
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