本年度は、嘯岳鼎虎の語録分析を中心に研究を行った。 山口には、嘯岳鼎虎と関わりの深い禅寺として洞春寺がある。洞春寺には、嘯岳鼎虎ゆかりの史料群が伝来しており、彼の伝記を把握するためにも洞春寺の資料調査を実施した。調査は、山口市教育委員会と関わりのある大内氏歴史文化研究会と共同の形態で行った。調査では、洞春寺文書(特に嘯岳鼎虎宛の公帖類)のほか嘯岳鼎虎の頂相も確認することが出来た。同時に、ご住職のご厚意により、1931年に洞春寺で和装本の形態で限定的に刊行された『洞春開山嘯岳鼎虎禅師語録』の残部を頂くことができた。本語録は、本研究で調査対象としている丹波高源寺本を底本として復刻した貴重な書籍であり、本研究の校訂作業上、非常に有用な資料となる。 上記の資料調査を参考としつつ、本研究では嘯岳鼎虎の語録『嘯岳録』のテキストデータベース化とその校訂を行った。 また、戦国期の他の語録と比較するために、当該期の語録の内、桂庵玄樹の語録『嶋隠集』(東京大学史料編纂所本)の紙焼きを入手することで、戦国期の語録の研究の深化を図った。当該語録は、即に一部が『続群書類従』で活字化されているものの、相当の異同があるため、相互に活用していく必要がある。戦国期に幻住派が活躍した前段階の九州地域の禅宗界を把握する上でも非常に有用な資料であることが分かった。 また、幻住派を活用した大名大内氏の外交活動に関する研究も行うことで、幻住派禅僧が活動する歴史的背景を追究することが出来た。 以上、2008年度は嘯岳鼎虎の語録とその関係史料の調査、桂庵玄樹の語録の調査、および大内氏の外交活動の研究を行うことが出来た。
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