平成19年度の研究の成果は、交付申請書記載の研究目的・実施計画に照らし、大別し(相互に関連する)3点にまとめられる。第一に、今般の科学研究費補助金の申請は、経営者の開示行動を調査するためにデザインする実験市場の実施にかかる費用とするためであった。このため、8月までに実験器具を調達・準備し、大阪大学豊中キャンパスにおいて11月13(火)・14(水)の2日間各2回、計4回の実験セッションを実施することができた。参加した学生は、60余である。ヒトがある情報を入手する、かつ/または他のヒトに当該情報を開示することは、結局は複雑な費用便益分析の結果となる。このため、今年度の実験は、情報の入手・開示の局面に関する諸制度を操作ないし処理して、当該操作ないし処理の経営者役の参加者の開示行動への影響を論点としてデザインした。現在、データの予備的な処理が終了しており、次(平成20)年度には、新たな実験の成果と合わせて、ワーキング・ペーパーとしてまとめ、査読誌投稿の足掛かりとする。第二に、経営者役の参加者の適切な開示誘因を引き出すには、投資者役の参加者の経済学的な合理的対応が必須であることは、先行する実験の結果からも、さらに理論的に理解されうる。このため、「情報の価値・情報入手行動に関する-考察-理論および実験研究」と題したサーベイ論文を著するため、関連する理論・実験研究文献を蒐集し、レヴューし、年度末までに原稿を完成させた。拙大学の紀要『追手門経済・経営論集』に掲載すべく、投稿する予定にしている。このほか、大阪大学大学院経済学研究科の高尾裕二先生および椎葉淳先生と共著で、当該研究課題の理論研究部分を書籍として出版するための会合および執筆作業がなされている。
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