本年度は、主として、言語教育における、ことばと文化、コミュニケーションの標準化についての資料収集及び考察を中心に行った。とりわけ、「英語」をめぐる様々な議論が、他の言語教育やコミユニケーション教育に、どのような示唆を与えるのかを考察した。 具体的には、言語教育におけるにネイティブ・スピーカー・モデルの批判的再検討を、とりわけ、「英語」や「英語帝国主義」の問題と関連付けて行った。言語が特定のある集団に属するという志向/思考の問題点と、現状における英語のノンネイティブ・スピーカーの多数性や種々の変種を考えたときに、言語が特定め集団に属ずるものではなく、ネイティブ・スピーカーに限定されず、コミュニケーションの手段として、言語は存在すること。そして、多様なヴァリエーションのあり方を肯定的にとらえることの必要性を考察した。 さらには、言語を単数形で捉える事への批判的検討と言語およびコミュニケーションの標準化への批判的検討を行った。とくに、言語の標準化の問題と比して、コミュニケーション(・パターン)の標準化の問題は、言語のそれよりも、自覚されにくいがゆえに、慎重に検討されなければならない。近年の、コミュニケーション能力やスキルをめぐる言説は、使用する言語を超えて、コミュニケーションの行い方を標準化するという点で、言語の標準化の問題と類似していると言える。 こうしたコミュニケーションの標準化・規範化の言説とその社会文化的背景についての考察が、次年度のさらなる検討課題である。
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