本研究の目的は、異なる背景を持つ外国人等の児童生徒、特にイスラーム教徒(以下、ムスリム)に対する国際的な観点から見た学校教育と支援システムについて、欧州の事例を参考にしつつ、日本独自の教育の可能性を探求することである。文献調査と聞き取り調査により、イスラーム教育の概念整理、国内外のムスリムに関する教育問題の実態を把握し、学校と外部組織の連携について情報収集及び体系化を行う。 本年度は、前年度に実施したドイツ(ベルリン)及びスウェーデン(ストックホルム、ヨテボリ、マルメ)の現地訪問調査をまとめ、文献調査によって考察を行った。その結果を包括的に最終報告書としてまとめて発行し、関係者へ配布した。 報告書第1章では、イスラーム教育とノンフォーマル教育、ソーシャル・キャピタルの蓄積から支持されるノンフォーマル教育とソーシャル・キャピタルを作り出すノンフォーマル教育について整理を行い、特にソーシャル・キャピタルについては広くレビューを行った。第2章は欧州諸国の統合政策に関して、移民政策指標とEurydiceの比較調査をまとめ、国際的な言語意識と枠組みの動向と移民教育の政策を取りまとめた。第3章ではドイツの事例研究を行い、現地調査の結果をまとめ、第4章では力学のモーメント概念を用いて、ノンフォーマル教育及びソーシャル・キャピタルの観点から考察を行った。最終章はそれらをふまえ、日本の学校教育と地域における可能性と限界について記した。
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