研究概要 |
本年度は,調和関数・優調和関数の境界挙動および非線形楕円型方程式の正値解の存在に関して以下の研究成果をあげた. 1.Fatou-Naim-Doob理論を発展させ,任意に2つの交わる領域を与えたときにそれぞれの領域のMartin核の比に対する極小細極限を完全に調べた。この一般論の具体的応用として,Lipschitz領域のMartin核の極付近での増大度と領域の形状の関係を明らかにした。 2.前年度に相川,Lundhとの共同研究で開発した手法を用いて,複雑な境界をもつ錐領域の頂点および無限遠点におけMartih核が唯一つ存在することを示した.また,非接領域内の集合の尖細性と極小尖細性の同値性を示し,正値優調和関数の増大度に関する結果を得た. 3.滑らかでない領域においてはGreen関数やMartin核の挙動は不明であるが,弱い内部条件のもとで「両者の積」がMartin核の極付近で具体的な関数で評価できることを発見した.また,内部条件を課さない場合,そのような評価が不成立となる反例を与えた. 4.特異型非線形楕円型方程式(例えば,△u=u^<-α>のDirichlet問題の正理解の存在について考察した.境界値が小さいとき正値解は存在しないが,境界値がある値より大きいときは必ず正値解が存在することをポテンシャル論的手法を用いて示した. 5.滑らかな領域において,非線形不等式(例えば,-△u≦u^p)を満たす正値優調和関数の境界増大度と非線形性の関係について考察した.p≦(n+1)/(n-1)の場合はそのような優調和関数の境界増大度は正値調和関数の最大増大度以下となり,p>(n+1)/(n-1)の場合は幾ちでも速く増大する優調和関数が存在することを明らかにした.また,非線形楕円型方程式の正値解でPoisson核と比較可能なものの存在についても指数(n+1)/(n-1)が臨界値であることをポテンシャル解析を通して明らかにした.
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