研究概要 |
本年度の研究成果は、2階非線形常微分方程式の解の振動に対する比較定理を与えたことである。線形微分方程式や半分線形微分方程式には、Hille-Wintnerタイプの比較定理のように係数項の積分の大小関係から、振動・非振動を判定できることは知られていたので、本研究では、非線形方程式に対して非線形項の積分の大小関係から、振動・非振動が判定できるのではないかと考えた。非線形方程式の解の性質に合わせて積分範囲を注視しなければならなかったが、積分条件を用いた比較定理を与えることに成功した。それによって、振動・非振動を比較できる非線形方程式の幅が、従来より格段に広がった。なお、本研究で得た比較定理の証明は、非線形方程式と同値な2次元微分方程式系を考察し、それを相平面上で解析することによって行う。また、得られた比較定理を利用して、次の3つについて研究成果を挙げた。 (1)振り子の運動方程式に代表されるように非線形方程式は一般に振動解と非振動解が混在するが、対象とした非線形方程式については、「全ての解は振動する」または「全ての解が振動しない」のどちらか一方が成り立つことを示した。 (2)比較定理と振動定数をもつ半分線形微分方程式の振動・非振動条件を組み合わせることによって、非線形常微分方程式の新たな振動条件と非振動条件を導いた。 (3)2階準線形楕円型方程式の球対称解が,非線形常微分方程式の解に対応することに着目し、楕円型方程式の正値解の存在・非存在に関する条件を与えた。
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