研究概要 |
本研究課題は, 電気浸透流により「流体の搬送」機能と「混合」機能を分離して流体の制御を行うことにより, 混合部長さを従来の数分の1に抑え, 流量変動にも対応した高性能マイクロ・ミキサーを開発することにある. 本年度は以下の3項目について実施した. 詳細を以下に記す. 1. T型およびクロス型チャンネルにおける混合促進 流路に印加する電場を非定常に制御することにより, ジャンクション部で2種の流体が折り重なって多層化される電場パターンを求め, 混合の促進を実現した. T型およびクロス型の単純形状の流路において, レイノルズ数がRe=約0.1の比較的高流量においても, 電場の周波数をストローハル数でSt=0.3に維持することによりジャンクション部より1.0mmの以内で90%の混合度を実現することに成功した. 2. マイクロ・ミキサーの性能評価基準の作成 従来, マイクロ・ミキサーの性能は混合の度合いを示す混合度のみで評価されおり, 流量や混合に必要な距離(マイクロ・ミキサーのサイズ)については評価基準が存在しなかった. 熱伝導・物質拡散の相似則を用い, フーリエ数とレイノルズ数, シュミット数の3つの無次元数を用いることにより, マイクロミキサーの流量と混合に必要な距離を含めた評価基準を作成した. 3. 簡易シミュレーション手法による混合パターンの評価手法の開発 混合に有効な印加電場パターンの検討のため, 速度場・濃度場の簡易シミュレーションを開発した. 実験より求めた流路壁のモビリティより定常流動場を計算し, 印加電場パターンに合わせて流動場を切り替えることにより非定常流れをシミュレートすることが可能であり, 従って濃度場のみの計算により物質拡散現象を評価することに成功した. 非定常流動場の計算が不要であり, 計算時間の大幅な短縮が可能となった.
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