(1)近世京都ならびに他都市の都市祭礼の事例整理と史料の蒐集 近世京都において開催された祭礼ならびにその行列等の実態を明らかにするための基礎的作業として、祭礼が行われた日時、場所、参加者、式次第等に関する史料・記録を収集・整理した。特に、本年度は、近世京都の祭礼に関わる朝廷社会・幕府ならびに町・町人・神社等に関する史料に着目し、公家の日記を中心に蒐集した。また、比較研究を行うための近世の他都市の祭礼に関する文献史料の収集・整理を行った。 (2)都市祭礼にみる朝廷と都市空間・京都の関係性の解明 本年度は、朝廷側の都市祭礼に対する認識を明らかにするため、特に天皇・院・女院の葬送時の都市祭礼の実施状況に注目した。近世において、天皇等が死去した後に朝廷から出される触穢令は、京都という都市空間すべてに適用されるとされ、特に朝廷と関係の深い神社の境内は閉門等で視覚的にも隔離されるようになり、都市祭礼や神社の神事が停止されるようになったが、近世中期になると、一部の神社では清浄な空間を保ちつつも神事・祭礼の実施が試みられるようになることを明らかにし、論文として発表した。このように、朝廷側の都市空間認識を尊重しつつも神社側が祭礼を実施する背景には、各神社の利益や氏子等の都市祭礼に対する欲求があると考えられ、朝廷・神社・町人が都市祭礼とその空間を重視していたことが解明されたと考える。 (3)研究支援データベースの構築 上記の研究をすすめるにあたり収集した資料を整理し、適宜データ入力を行った。都市祭礼に関しては社会史学や美術史学・民俗学からも分析がすすめられていることに考慮し、建築史学・民俗学・社会文化史学・美術史学・宗教史学等、幅広い分野の資料を収集し、データ入力をすすめている。
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