自動車の車体軽量化のためにボディパネルにアルミニウム合金を使用することが望まれている。中でもAl-Mg-Si系合金は、中強度で成形性に優れるという観点からボディパネル材への適用が期待されている材料である。しかし、Al-Mg-Si系合金には、成形加工時にリジングと呼ばれる筋状の凹凸が圧延方向に発生するため、アウターボディパネルに用いる際の障害となっている。リジングの発生には集合組織に密接に関係することが知られているが、詳細は不明な点が多い。そこで本研究では、Al-Mg-Si系合金のリジングの発生と加工熱処理工程の関係を、集合組織形成に着目して明らかにし、リジングの効果的な抑制技術への提案を行うことを目的として研究を行っている。 今年度は、6111アルミニウム合金を試料として用い、「熱間圧延」→「中間焼きなまし」→「冷間圧延」→「溶体化処理」の加工熱処理工程を施した試料を用いて、熱間圧延温度ならびに中間焼きなましの有無による集合組織形成がリジングに与える影響について検討した。その結果、熱間圧延温度が高いほど、また中間焼きなましを行ったほど、リジングが顕著に発生することを明らかにした。溶体化処理後の圧延面の結晶方位解析を行った結果、リジングが発生する領域において、立方体方位粒がバンド状に分布していることが明らかになった。すなわち、立方体方位粒の分布状態とリジング発生に密接な関係があることが分かった。 今後は、立方体方位粒の形成過程について各加工熱処理時の結晶方位分布より明らかにし、リジング発生に起因する集合組織の制御方法について検討する。
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