皮膚の炎症では、血管透過性が高まり組織液の貯留や浮腫などが生じるが、その組織修復にリンパ管が関与していると考えられている。しかしその役割や経時的なリンパ管の形態学的な推移については未だ不明な点が多い。リンパ管新生では、VEGF-Cがリンパ管内皮細胞に特異的に発現するVEGFR-3に作用することで、その分化や増殖を誘導することが知られている。そこで、ヒト由来のVEGF-CおよびVEGFR-3-Ig融合蛋白を発現すべく組み込まれた飴Vベクターをマウスの尾静脈から静注してトランスジェニックマウスを作成し、これらを用いて、耳介に接触過敏反応を誘導した。経時的な耳介の腫脹を比較すると、VEGF-C発現マウスではコントロールに比べ速やかに腫脹が減少し、リンパ管新生を阻害しているVEGFR-3-Ig融合蛋白発現群では腫脹が持続した。耳介組織でのリンパ管をLYVE-1での免疫染色と画像処理により定量評価すると、VEGFR-3-Ig融合蛋白投与群ではリンパ管の拡張が持続していた。また、抗CD11b抗体での免疫染色で組織でのマクロファージ数を比較すると、同群ではコントロールと比べて増加しており、炎症の軽減が遅延していることが示唆された。さらにin vitroでのリンパ管内皮細胞を用いたproliferation assayにおいてVEGF-Cでの刺激で有意な細胞増殖がみられたが、可溶性VEGFR-3中和抗体を加えるとその増殖が抑制された。これらから、VEGFR-3を介したVEGF-Cによるリンパ管機能への作用が炎症における組織修復の促進に関与することが示唆された。今後さらにPCRによるリンパ管関連因子の発現を定量評価する予定である。これらがリンパ管機能の活性化や阻害する因子の解明につながり、さらには炎症性皮膚疾患に対する治療の新たな標的となる可能性が期待される。
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