研究課題
若手研究(B)
SCC抗原は、進行扁平上皮癌症例でこの血清値が上昇することから、扁平上皮癌の腫瘍マーカーとして広く臨床の場で用いられてきた。しかしながらその遺伝子座が同定され、SCC抗原は、SCCA1,SCCA2という相同性の極めて高い2種類の蛋白から構成されているということが判明した。さらにこれらはserine protease inhibitor familyに属する生物学的機能を有する蛋白であることが分かってきた。一般的に癌細胞が浸潤、増殖する際や、炎症が広がる過程では、各種proteaseの活性は増大する。従ってprotease inhibitorは、むしろ癌細胞の増殖や炎症の広がりには抑制的に働くと考えられる。そこで実際にはSCCA1蛋白に特異的に結合するproteaseが頭頸部癌細胞中に存在するのではないか。2.このproteaseがSCCA1蛋白と細胞内外で結合することによって癌細胞の浸潤、増殖が抑えられているのではないか。という仮説のもとに検討を行った。細胞外でのSCCA1蛋白の役割について解析を行うため、ヒトSCCA1蛋白を用いて培養細胞株にSCCA1蛋白を加え、増殖能、浸潤能の解析を行った。結果としてSCCA1蛋白添加群では癌細胞の増殖、浸潤能が抑制されていた。次に細胞内外でSCCA1蛋白と特異的に結合するproteaseが存在しないか解析した。細胞外でのSCCA1蛋白と結合するprotease同定のため、頭頸部癌細胞の培養メディウムにSCCA1蛋白を添加した後immunoblot法でcomplex bandの出現の有無を解析した。細胞内でのSCCA1蛋白と結合するprotease同定には、SCCA1遺伝子導入株、コントロール株から蛋白を抽出し、immunoblot法でcomplex bandの出現の有無を解析した。その結果、培養細胞にSCCA1をいかなる条件で添加してもcomplex bandの出現は認められなかった。今検討ではcomplexbandの検出には至らなかったものの、western blot法によるSCCA1 bandの解析では本来の42kDa以外に他の蛋白と結合したあとに検出される38kDaのband(cleaved form)が検出された。この事はcomplexが非常に不安定な環境下にあり、一旦結合したあとにすぐさま分解されたことを物語っている可能性が高いと考えられる。今後もさらに何らかの役割を持った未知のtarget protease同定を試みる必要があると考えている。
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