研究課題
学術創成研究費
バブル崩壊後の長期停滞から脱却すべく、「構造改革」が推し進められた。そこでは、従来、多くの分野で共同体的な関係に根ざした不透明な制度や慣行が存在し、様々な保護行政により効率の悪いシステムを温存してきた構造に長期停滞の主因があり、この構造的要因を除去し、人々の創意工夫を生かす自由な活動の促進が社会・経済の再生に不可欠と考えられた。しかし、単純に規制をなくすだけでは、不公正な取引が横行し、企業の組織形成においても、強者による不公正な支配に歯止めが効かなくなる。そのため、規制緩和の一方で、市場の公正さを確保し、自由な競争を保障するための規制の拡充・強化が要請される。また、そうした自由で競争的な市場に委ねることは効率性の追求に役立つとしても、それにより私人間の関係形成が歪められ、社会の存立基盤を掘り崩すような結果がもたらされる危険性もある。構造改革は、人々を他律から解放しようとした。だが、今求められているのは、自律としての自由を尊重しつつ人々の共同性を確保することを可能にする法システムであると考えられる。従来型の規制でも自由放任でもなく、自由を尊重しつつ共同性の確保を可能とする法システムのあり方を検討することが本研究の目的であり、次の3つの側面から検討を進める。(1)市場の秩序形成。自由で競争的市場と公正な取引を確保する制度、企業活動を活性化しつつ逸脱行動を防止する企業組織を検討する。(2)社会の秩序形成。自律と信頼を確保する制度として契約・責任・家族制度を再検討し、効率性原理の浸透が社会と個人の存立基盤を脅かさないようにするセーフティネットを検討する。(3)エンフォースメント。個人や自律的団体のイニシアティブの活用も含めた実効的法執行システムのあり方を検討する。これらの検討を通じ、将来整備を進めるべき法的規制のプログラムを提言する。研究の中心的な課題として、市場秩序と消費者支援、個人の自立と社会保障、これらに相応しい規制・執行システムに焦点を合わせる。研究期間を3つの期に分け、第1期(平成19・20年度)を現状の把握と問題点の整理、第2期(平成21・22年度)をそれに基づく新たな法モデルの検討、第3期(平成23年度)をこの法モデルを基礎とする具体的法的規制のプログラムの検討にあてる。
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企業法の課題と展望(川濱昇ほか編)(商事法務)
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http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/gakuso/