研究実績の概要 |
自然環境の変化を把握するには点のデータだけでなく, 面や空間のデータを捉える必要がある. 多変量である空間データを認識しやすくするには, 三次元の地形を等高線で示した地形図や, 各地点における気圧の変化を等圧線で示した天気図のように, データを縮減した等値線で描くことが一般的である. 昨今の高校生はこうしたデータ縮減や, 縮減されたデータを高次元の空間へ戻した状態をイメージする作業に不慣れである. そこで, 申請者の勤務先であり, 森林や裸地など土地環境の変化に富む本庄キャンパスの環境データ(気温・湿度)を温湿度データロガーを多数用いて観測し, 等値線マップを作成して環境変化の特徴を読み取る教材の開発を試みた. まず, 比較的低価格(2~3万円)で入手しやすい温湿度データロガー2機種について, センサー感度等の性能差を検証し, 本研究の目的に合ったデータロガーを選定した. 次に, 選定した機種を複数台(12台)導入し, 等しい環境下で作動させて器差を測定したところ, 温度の器差は0.3℃~1.4℃, 相対湿度の器差は指示値(単位%)で0.5~6.7であった. この結果を踏まえ, 温度については標準温度計で求めた標準値との校正を行った. 湿度については, アスマン通風乾湿計による計測や飽和塩溶液を用いた計測によって校正を行う必要が残される. センサーを日射や風雨から守るためのラジェーションシールドは非常に高価なため, ホームセンターで入手できる材料を用いて設計・自作し, シールドが測定値に与える影響, 耐久性について検証中である. 検証の途中段階であるが, 自作シールドを用いた低価格データロガーによる測定であっても, 環境解析の教材として十分な精度が見込まれる.
|