研究課題/領域番号 |
19H00560
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
嶋村 鉄也 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80447987)
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研究分担者 |
大出 亜矢子 北里大学, 獣医学部, 助教 (00814203)
内藤 大輔 京都大学, 農学研究科, 助教 (30616016)
甲山 治 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (70402089)
杉元 宏行 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (70425742)
伊藤 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70456820)
御田 成顕 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 講師 (70800655)
久米 崇 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80390714)
増田 和也 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90573733)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱帯泥炭の保水性 / 泥炭の燃焼 / 泥炭火災 |
研究実績の概要 |
泥炭は植物遺体が冠水条件下で未分解のまま堆積した有機質土壌である。寒帯ではミズゴケやヨシなどの遺体が、熱帯では木本植物の遺体がその基質となっている。この泥炭土壌は開発の際に排水がおこなわれ、乾燥し、燃えやすいものとなる。熱帯域では開発により多くの泥炭地で火災が頻発し、それに伴い膨大な量の温室効果ガスの放出や煙害などが生じ深刻な環境問題となっている。本課題では熱帯および北方泥炭の保水性や燃焼特性を計測した。これらの燃焼に関わる特性は、特に熱帯域においてはその不均一性などの理由から理解が進んでいないからである。泥炭は北海道新篠津村の泥炭復興フィールドから採取した北方泥炭と、インドネシア・中央カリマンタン州の混交林型の森林および、火災被害地より熱帯泥炭を採取し、その保水性と燃焼特性を調べた。 保水性試験の結果、北方泥炭は飽和時~pF1.0で90%以上、熱帯泥炭は60%、pF1.0で50%程度の体積含水率であった。また、pF4.2で北方泥炭は40%程度、熱帯泥炭で20%程度の体積含水率であった。火災被災地の泥炭も森林部の泥炭と同程度の値を示した。含水比は飽和時~pF1.0のとき、それぞれ北方泥炭で700%~800%、熱帯泥炭では300%前後の値であり、北方泥炭の保水性が高いことが示された。熱帯泥炭の熱重量分析を行った結果、ヒノキなどの木材を燃焼させた際に生じる300℃前後におけるセルロースの燃焼による発熱とその蒸発による吸熱を確認することができず、発熱反応が継続していた。 これらの結果より、1)熱帯泥炭は北方泥炭よりも保水力は低いということ、2)火災を経験した場所の泥炭も、経験していない場所の泥炭も保水性に大きな違いがない可能性が示唆されたこと、3)熱帯泥炭は木材と同様の燃焼特性を持つと考えられたが、セルロースの分解が進行しており、木材と異なる燃焼特性を持つ可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響によりインドネシア国内への入国ができない状況で、本課題は多くの製薬を受けている現状がある。また、喜ばしいことではあるが現地ではここ2年以上継続して湿潤な状態であり火災の影響を観測することができない。そのため火災に関する一部の調査を実施することができなくなっている。同様に冠水状態が続いているため熱帯泥炭のサンプルを十分に入手することができなくなっている。代替的に北海道の泥炭を採取し予備的な分析を進めている。中央カリマンタン州の消防団について聞きとり調査を行い、過去の火災状況やそれに対する対応、消防団の地域間比較などを行っている。また関連する行政文書についても入手をしており分析をすすめている。地形と気象についての現地調査は滞っているが衛星画像等をしようした分析を開始している。ただし代替的にドローンを使用した調査を現地大学にいたくしておりこちらは進行している。
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今後の研究の推進方策 |
インドネシアへの入国条件が緩和され次第現地調査を開始する予定であるが、当面の間は委託調査が中心となると考えられる。これまでと同様、現地での泥炭の密度変化に関する調査、泥炭のサンプリング、アンケート調査、ドローンによる空中からの画像撮影に関しては現地への調査委託で勧めていく予定である。ただし、インドネシアではなくマレーシアに関しては入国条件等が緩和されており、代替的に行うことが可能な調査はマレーシアで行うことも検討している。衛星画像解析については引き続き現地カウンターパートからの情報をもとに、画像の場所と時間を決定し解析を行っていく予定である。
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