研究課題/領域番号 |
19H00580
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小杉 泰 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 教授 (50170254)
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研究分担者 |
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
山根 聡 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (80283836)
見市 建 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (10457749)
長岡 慎介 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (20611198)
森 伸生 拓殖大学, 付置研究所, 教授 (20349202)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イスラーム法源学 / イスラーム政治 / イスラーム経済 / イスラーム食品産業 / 穏健派と過激派 |
研究実績の概要 |
第1年度にあたる昨年度の研究実績は、以下の通りである。 まず、計画全体を概観すると、本研究では、本プロジェクトの目的を達成し、現代イスラームにおける法源学の復権と政治・経済の新動向をみきわめるために、次のような研究活動を実施する計画となっている――(1)イスラーム法源学、サラフィー主義に関する原典資料・文献の収集と基礎研究、(2)前項に基づく「イスラーム法源学データベース」の構築、(3)特に着目する重要4分野である「政治と暴力」「イスラーム経済」「ハラール食品産業」「性倫理と服装規定」に関する全体的研究、(4)前項の研究に基づく知見の各地域への適用・事例調査・地域間比較、(5)以上に関する国際研究協力の推進と国際的研究集会等を通じた成果発信、ホームページやプリント媒体を用いた社会的な成果発信。 昨年度には、次のような実績をあげた――(1)研究に必要な原典・文献の収集:収集のため集書リストを作成し、収集の年次計画を立案して、第1年目の計画を実施した。(2)収集された文献、特にアラビア語原典を用いて、イスラーム法源学の主要用語を収集した。これは「イスラーム法源学データベース」で活用する素材となる。(3)サラフィー主義の研究について基本文献を収集し、メンバー間で近現代サラフィー主義の歴史的変容をどのように解析するか等を論議し、新しい知見を得た。(4)重要4分野の中では、特に「イスラーム経済」「ハラール食品産業」について研究が進展し、いくつも成果発信をおこなうことができた。(5)成果発信については、本プロジェクト予算で国際研究集会を3つ組織し、それ以外にも国際学会や国内外の研究集会で19本の成果発表をおこなった。国際共著論文1を含む14本の論考を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究はおおむね順調に進展している。具体的には、次の通りである――昨年度は、第1年目として、(1)最初に全体的な研究計画を研究代表者、分担者、協力者が集まって検討した。そこで、問題意識の共有化、研究会等のスケジュール管理、データベース構築の行程立案などをおこなった。(2)文献・資料収集については、まず研究に必要な原典・文献の収集計画を立案して、アラビア語の原典資料、英語の最新の研究書を収集し、第1年度の集書計画を終えた。文献・資料収集は、今年度も継続する。(3)収集された資料を活用して、「イスラーム法源学データベース」の構築の前提となる準備作業をおこなった。その一環としての法源学の専門用語の収集などは順調に推移している。(4)内容面では、イスラーム法源学については、基本的な研究を進め、論文を公刊したほか、その成果について、3回の国際シンポジウムを中心として報告をおこない、欧米や東南アジアの専門家から貴重な助言を受けた。国内公開シンポジウムでも成果発信をおこなった。(5)サラフィー主義の研究については、基本文献を収集し、研究視座をめぐる議論を中心に今後のアプローチについて検討した。特に20世紀後半から21世紀にかけて、それ以前と比べると「サラフィー主義」の実態も概念把握も多極化していることが判明し、それへの対応が論点となった。成果として公刊する段階をめざして、今年度も調査と論議を継続する。(6)重要4分野についても基本文献の収集に着手し、研究分担者・研究協力者と細かな研究計画を立案した。今年度はそれを順次実施する。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本研究プロジェクトの全体的な概要としては、現代イスラームにおける法源学の復権と政治・経済の新動向をみきわめるために、次のような活動をおこなうことになっている――(1)イスラーム法源学、サラフィー主義に関する原典資料・文献の収集と基礎研究、(2)「イスラーム法源学データベース」の構築、(3)重要4分野である「政治と暴力」「イスラーム経済」「ハラール食品産業」「性倫理と服装規定」に関する全体的研究、(4)前項の研究に基づく知見の各地域への適用・事例調査・地域間比較、(5)以上に関する国際研究協力の推進と国際的研究集会等を通じた成果発信、ホームページやプリント媒体を用いた社会的な成果発信。 本年度は、第2年度として、昨年度の活動と成果を継承・発展させるために、次のように研究を実施する――(1)研究に必要な原典・文献の収集計画を継続し、「イスラーム法研究会」などを通じて、イスラーム法源学とサラフィー主義の研究をさらに進める、(2)「イスラーム法源学データベース」の構築の具体的な作業に着手する、(3)「イスラーム政治研究会」「イスラーム経済・ハラール産業研究会」などを通じて、重要4分野の研究をさらに実施する、(4)得られた結果を基にして、国際研究集会等において成果発表を順次おこなうとともに、一般向けの講演会やホームページなどを通じた社会還元もおこなう。 昨年度は、貴重な原典資料の入手によって、研究基盤の整備がかなり進む成果を得た。さらに今年度もそれを継続し、データベース構築にもそれを活用したい。また昨年度は、国際研究集会も順当に実施でき、海外の研究者から貴重な助言をもらうこともできた。今年度もその流れを継続する予定であるが、他方でコロナウイルス問題によって国際的な往来が制限されることもありうるため、必要に応じて「オンライン国際集会」を実施して、研究交流を進める。
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