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2020 年度 実績報告書

行動経済学による共同体メカニズムの実証研究と理論研究

研究課題

研究課題/領域番号 19H00599
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

大垣 昌夫  慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90566879)

研究分担者 星野 崇宏  慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20390586)
窪田 康平  中央大学, 商学部, 教授 (20587844)
大竹 文雄  大阪大学, 経済学研究科, 特任教授(常勤) (50176913)
奥山 尚子  大阪学院大学, 経済学部, 准教授 (80617556)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード行動経済学 / 共同体 / 国際比較 / 経済実験 / OECD Trustlab / 信頼 / 利他性 / 応報性
研究実績の概要

少子高齢化で政府財政赤字の問題が深刻化すること等から重要になると考えられる共同体メカニズムの研究のために、本研究では行動経済学の手法に基づいて国際比較可能なデータを構築している。この一環として2020年度はOECDのTrustlabの第3回調査を実施した。Trustlabは共同体メカニズムの活性化のために重要となる信頼や利他性などのソーシャル・キャピタルや利他性や応報性等の社会的選好の国際比較研究のためのオンライン実験とアンケート調査のプロジェクトで、そのメイン・プロジェクトでは各国で千人以上の所得、年齢、性別について代表性を持つ協力者を対象に実施される。すでに本課題による日本での調査を含めて2020年までに8カ国で実施されている。OECDのTrustlabメイン・プロジェクトは他の国々では全て1回だけの調査であるが日本では本課題により2019年度に2回の個人追跡調査を実施し、2020年度に第3回調査を実施した。
共同体メカニズムの理論研究の発展として2020年度に徳倫理を規範経済学分析に導入する枠組みを構築する研究で、枠組みの応用のひとつとしてアマルティア・センのリベラル・パラドックスで用いられる例を分析した。また、世界観が異なる人たちが企業で協働する場合にイノベーションとコンフリクトの両方の可能性が高まるが、教育にコンフリクトの可能性を減少する効果を持つモデルを開発した。モデルでは世界観の違いによって歴史的事実について論争がある場合に事前確率が異なる事実認識についてそれぞれ100%である場合は、合理的であっても科学的証拠によって事後確率が変更していかない。このモデルは世界観の違いがあるときに、世界観の信条についての議論をするよりも、異なる世界観を持つ人たちが互いの信条の違いを理解しつつ協力しあえる教育等の方法を用いていくことがより生産的であることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

OECDのTrustlabメイン・プロジェクトは他の国々では全て1回だけの調査であるが日本では本課題により2019年度に2回の個人追跡調査を実施し、2020年度は申請時の計画では2021年度に予定していた第3回調査を前倒しして2021年2月に第3回調査を実施する予定で準備を進めた。しかし調査委託先のOECDの最終決定に予想外の遅れが生じため調査を延期する必要が生じた。このため、繰り越しを申請し、2021年9-10月に第3回調査を実施した。
徳倫理を規範経済学分析に導入する枠組みを構築する理論研究で、経済学で広く用いられている効用を厚生概念とする厚生主義以外の倫理理論を規範経済学分析に導入すると、全ての人の効用がより高くなるような資源配分の変更は社会的に望ましいと評価されるべき、とする(弱)パレート原理が成立しなくなるという理論結果が先行研究で知られている。厚生主義以外の倫理理論としてリベラリズムを考えると、リベラル・パラドックスはこの結果の一例と捉えることができる。徳倫理を導入する場合も、同様にパレート原理が成立しなくなるため、リベラル・パラドックスで用いられてきた例を構築した枠組みで分析することが有益であり、この結果を国際学会で発表した。
世界観に違いがある場合の教育とイノベーションの研究は、学会やセミナーで発表して得られたコメントを基に論文を改訂しディスカッション・ペーパーとして公表した。

今後の研究の推進方策

実証研究ではOECDのTrustlabプラットフォームによって得られた第3回までの個人追跡データは、第3回調査では、OECDには第1~2回の調査での個人IDが個人情報保護の規則上の理由で予想外に提供されなかったため、第1~2回調査のデータとの個人の接合は、誕生年月のデータや協力者の両親の教育のデータ等から実施していく。また、これらの分析を進めて学会やセミナーで発表し、ディスカッション・ペーパーとして公表してコメントを得るようにする。課題の実証研究で用いているもうひとつの種類のデータは、日本と米国のホームスクーラーの親子ペアを対象とした実験のパネルデータである。今後はまだ分析に含めていなかった日本の最終年のデータを含めて日本でのデータを再分析し、米国の分析結果との比較分析を進めていく。
理論研究では徳倫理を規範経済学分析に導入する枠組みを構築する理論研究でリベラル・パラドックスの例に枠組みを応用した結果と学会発表で得られたコメントを基に論文を改訂していく。また、世界観に違いがある場合の教育とイノベーションの研究は国際学術誌に投稿を始める。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Reading(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Reading
  • [国際共同研究] James Madison University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      James Madison University
  • [雑誌論文] Persistent Divides in Beliefs, Conflict, and Innovation2021

    • 著者名/発表者名
      Mihailov Alexander, Ogaki Masao
    • 雑誌名

      Keio University, Institute for Economi Studies Discussion Paper

      巻: DP2021-004 ページ: -

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] How Conscious Are You of Others? Further Evidence on Relative Income and Happiness2021

    • 著者名/発表者名
      Lee Sun Youn、Ohtake Fumio
    • 雑誌名

      Journal of Happiness Studies

      巻: 22 ページ: 3321~3356

    • DOI

      10.1007/s10902-021-00364-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 豪雨災害時の早期避難促進ナッジ2020

    • 著者名/発表者名
      大竹 文雄、坂田 桐子、松尾 佑太
    • 雑誌名

      行動経済学

      巻: 13 ページ: 71~93

    • DOI

      10.11167/jbef.13.71

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Introducing Virtue Ethics into Normative Economics for Models with Endogenous Preferences2021

    • 著者名/発表者名
      Ogaki Masao
    • 学会等名
      CREDO Economics and CST Virtual Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] 経済的選好と社会関係資本・ICTリテラシー、AIへの認識2021

    • 著者名/発表者名
      奥山尚子・澤田康幸・戸川和成・稲葉陽二
    • 学会等名
      日本社会関係学会第1回年次大会
  • [学会発表] 大学や病院の保育委託で保育の質を守る方法についてー 公共メカニズム、市場メカニズム、共同体メカニズムの研究2020

    • 著者名/発表者名
      大垣昌夫
    • 学会等名
      日本経済学会2020年度秋季大会
  • [図書] [新版]進化する経済学の実証分析(「行動経済学」)2020

    • 著者名/発表者名
      経済セミナー編集部 (編)、大垣昌夫(著)
    • 総ページ数
      184 (7)
    • 出版者
      日本評論社
    • ISBN
      978-4-535-55976-9
  • [備考] 慶應義塾大学経済研究所共同体メカニズム研究センター

    • URL

      https://cmrc.keio.ac.jp/funding-and-partners/scientific/

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公開日: 2022-12-28  

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